DOMINISTORE

2019/05/14 18:10


 ドーミーいんこは驚いていた。開業日前日だと言うのに、レストランスタッフのパートさんたちがまだ一度も調理していないことを知ったからだ。
 初めての厨房。初めてのメニュー。大丈夫だろうか。ドーミーいんこには不安すらよぎった。
 ところが、料飲支配人は自信すらのぞかせる。
「大丈夫ですよ」
 その自信はどこから? ドーミーいんこは思った。すると…。
「レストランも厨房も何もない状態からの準備。調理器具・用品、お皿などは納品されたら、すべて検品、洗浄してから収納します。どこに収納すれば使いやすいか、ある程度決まっていますが、ウチの場合はご当地メニューがありますから、それによって調理器具の設置場所や備品・食材の収納場所を調整する必要があるんです」
 何が言いたいんだろう。ドーミーいんこはまだわからなかった。
「検品、洗浄、収納は、レストランスタッフ総出で行うんですよ」
 これで、ドーミーいんこは気付いた。どこに何があるのか、みんなに把握してもらうんだな、と。
「メニューは私が試作しているところを、パートさんたちはスマホで動画を撮って、覚えようとしてくれています」
「!!!」

 開業日前日にはレストランの写真撮影が行われた。この時も、スタッフ総出。その料理はすべて、料飲支配人が作っていたが、その周りには真剣なまなざしを向けるパートさんたちの姿があった。
 そして、撮影用とは言え、本番さながら、すべての料理がズラリと並べられた。ドーミーいんこはもう気付いていた。これが、料理を並べるトレーニングも兼ねていることを。



 写真撮影後、パートさんたちは初めての調理を行った。地元の人たちだけに、良く知っているであろう、越前おろしそば、座布団揚げ(メニュー名は越前肉厚揚げ)、へしこ茶漬けなどのご当地メニューも、その調理手順を1つ1つ料飲支配人に確認しながら調理していた。

 ドーミーいんこはその姿を見ながら、料飲支配人のこんな言葉を思い出していた。
「越前そばは通年冷やしで食べるとか、大根おろしや鰹節はもっとたっぷり乗せるとか、パートさんから地元ならではの食べ方を教えてもらいました」
 地元の有名なメニューを出すだけでなく、地元での食べ方にもこだわっているのか。これぞ、ご当地!と思わずにいられないドーミーいんこであった。

 かくして迎えた開業日。朝礼が行われ、総支配人のこんな言葉で締めくくられた。
「47都道府県幸福度ランキングで、福井県は3回連続の第1位です。お泊まりにいらっしゃったお客様、働いているスタッフのみなさん、みんなが幸せになる、福を感じる。そんなホテルにしましょう!」

 その後、ドーミーイン福井は予定どおりオープンし、その夜の夜鳴きそば、翌朝の朝食へと、つつがなく進んだ。
 当然と言えば当然。ドーミーいんこは思った。ところが、その後、ドーミーいんこは思いもよらない場面に遭遇する。

 その開業日翌日の話は〝番外編〟で。



  〝開業前〟の話はいったん、おわり。




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